2018年11月30日金曜日

アース21の情報交換

こんにちは。はかせです。

インターネットが普及して情報で溢れるようになりましたが、9月の地震のときにもデマが流れたり、情報の真偽を確かめるのも大変です。ホントに知りたい情報が必ずしもインターネットで見つかるともかぎりません。

アース21では設立時の25年前から一貫して情報交換を大切にしてきました。活動理念の一つでもある情報交換について、設立の2年後、1996年の新聞記事に掲載された内容から振り返ってみます。「帯広をヒントに情報交換 共通の課題解消へ」という見出しが付いた記事の後半を以下に引用します。

 具体的な目標としては①資材の共同購入②アース21仕様の確率③資材センターの設立−などを掲げており、現時点では、定例会や講習会・現場見学会などを定期的に開催し会員各社が議論を交わす中で、道内各地の資材価格や会員の経済状況など具体的な情報を集めている段階という。
 情報収集の方法として面白いものの一つに「原価公開」がある。これは、会員各社が、それぞれ自社の施工見積もりを持ち寄り、各地の資材価格や資材の入り方、人件費、粗利の地域差を探ろうというもので、資材の共同購入などグループの協同事業を展開する上での資料として使っていく予定だ。
 これについて橋本会長(※当時)は「ダントツに資材価格が安いのは、やはり地場工務店が強い地域と言われている帯広。この背景には、資材価格やルートについての地場工務店同士の情報網があり、これが大手との価格競争に打ち勝てる帯広の業者の強さになっているようだ。一方、札幌は業者間格差が大きい。現在、グループの中では、帯広の業者のような情報交換の基盤が出来上がりつつあるが、こうしたグループがいくつも出来れば札幌の状況も変わってくるのではないか」と分析している。
 このほか、定例会の中でも自社の経営上の問題点を報告し合ったり、会員が自社の事業の中で新しい試みに取り組む際はグループ全体でバックアップするといった形の情報交換も行なっている。
「アース21が他の団体とはちがう」と言われるのは、こうした取り組みもきっと理由の一つなのでしょう。それにしても、記事に室長の顔写真が載っていますが、さすがに若いですね(笑)


2018年11月22日木曜日

2年目のアース21

こんにちは。はかせです。

函館でも雪が降り、家の屋根や木々には雪が積もって、北国らしい雪景色になってきました。

今はなくなってしまいましたが、以前、「北国の家」(北国企画出版社)という住宅雑誌がありました。事務所にバックナンバーが残っていますが、アース21設立2年目を迎えた1995年5月号(Vol. 25)に広告が掲載されます。1月17日に阪神・淡路大震災が起こった年です。この地震では住宅にも甚大な被害が生じました。

今年の9月に北海道でも阪神・淡路大震災と同じ震度7の地震が初めて起こりました。震源地付近の厚真町などでは土砂崩れによる被害が大きく、札幌市内など一部では液状化による被害もありましたが、阪神・淡路大震災のような都市部での広範囲に及ぶ家屋倒壊や火災は生じずに済みました。

アース21の歴史を振り返る投稿の2回目は、震災の1995年に掲載したこの広告です。

飛躍をつづけ地域に密着「アース21」

「住まい」は、未来へ贈る財産です。

アース21が住宅業界の流れを変えます。


 住まいは本来地域に密着し、その土地の歴史、気候、風土の中から育つ文化そのものでなければなりません。しかし現実は「商品」としての位置付けの中で、大手ハウスメーカーを軸とした画一的な住まいが蔓延しています。
 また、先進の欧米諸外国に比べ、耐用年数が短い日本の住宅。地球環境保全が叫ばれ、高性能・高耐久の家づくりが主流になりつつある昨今においても、まだまだ使い捨て間隔から抜け切ることができません。わずか10年、15年で壊され、建替えられているのが現状です。
 資源の少ない日本が、限りある木材をたくさん使って地球の環境を破壊しています。そしてできあがった住まいや街は、中央からの一方的な価値観と、使い捨ての風潮の中で住文化とはおよそかけ離れたものになっています。
 アース21はこうした問題点を見据え、「地域に密着した家づくり」という本来の姿にたち戻るために結集した、道内各地の工務店のグループです。地域産業としての家づくりを推進していくことで地場の経済が守られ、文化が育まれてゆくと考えたのです。
 一軒の家を建てるのに何千万円もお金をかけ、ローンを返し終わったときにはすでにその家の寿命は尽きているという今の日本の家づくり。これは地球の環境を破壊するばかりではなく、暮らしそのものを貧しくしています。
 50年、100年もつ耐久性の高い住宅なら、自分の代だけではなく子供や孫に財産として住まいを残すことができます。また、耐久性の高い住宅は住み心地も快適で、年月がたっても古びることがありませんから、逆に価値も高まってゆきます。「住めば住むほど価値の上がる家」こそが、ほどなく訪れる21世紀の住まいなのです。
 アース21にはこの思想のもとに、高耐久性・省エネルギーのための確かな技術力をもつ地場の工務店が集結しています。高性能住宅の技術に加えて、綿密な打ち合わせ、きめ細やかな対応、迅速なアフターメンテナンスが家づくりの重要なポイントになりますが、これらは地場の工務店だからこそ可能です。
 これからの住まいは、単に個人のものではありません。地球の財産として、未来へ贈るものでもあります。これからの住まいづくりをアース21とともに考え、創ってゆきませんか。

地場に密着した住まいづくりのために連帯を続ける、アース21


 アース21には現在、道内各地で活躍中の12社が参加しています。どのメンバーも快適な居住環境、最低50年以上の耐久性を実現する、確かな技術をもつ工務店です。
 研修会や勉強会など日ごろの活動を通し、メンバー間の情報交換をしたり、お互いの技術を理解し、切磋琢磨しあうことで、より確かなハイレベルの技術力をつけています。
 快適な居住環境、高性能、高耐久住宅の基本である「高断熱・高気密・計画換気全室全日暖房」の住まいを、カナダの高気密住宅・R-2000の基準を超える高水準で提供しています。また、このようなハイレベルの住宅を低コストで提供するために、資材の流通形態を見直し、合理化、省力化した家づくりを行うことも使命の一つと考え、各社協力のもと、進めています。
 アース21では、今後とも志を同じくする仲間の工務店を増やし、大手に対抗できる地場産業として地域の工務店が育ってゆくために連帯してゆきます。

2018年11月16日金曜日

アース21の設立25周年

こんにちは。はかせです。

今年、FMノースウェーブが開局25周年ですが、アース21も同じく設立25周年です。25周年を記念して道外例会として九州への研修旅行が行われました。はかせは残念ながら参加できませんでしたが、報告の写真などを見ても大変有意義な研修旅行となったようです。

室長が発起人となってアース21が設立したのが1994年4月20日です。4月23日付の業界紙にも記事が掲載されました。そこで、ちょっと疑問がわきました。今年は2018年です。設立からまだ24年しか経っていないのでは?今年は設立25年目です。一方、FMノースウェーブの開局は1993年なので、今年で丸25年が経って26年目に入っています。もしかして、アース21の25周年はフライングだったのでしょうか?(笑)

気になって調べてみましたが、どうやら設立○○周年というのは、○○年目でも、丸○○年でもどちらでもいいようです。国立国会図書館のレファレンス協同データベースによると、インターネットで調べた結果として、「『満』で数えることが正しいが、『かぞえ』であっても誤りとは言えない」という判断のようです。フライングではありませんでした(笑)

話がそれてしまいましたが、せっかくですので、アース21の25周年を記念して、設立からのアース21の歴史を新聞記事の切り抜きなどを通してこの機会に何回かに分けて振り返ってみようと思います。まず初めに、今回はアース21設立についての新聞記事です。なお、新聞記事はおそらく業界紙のものだと思われますが、記載がないため正確にはどの新聞かは分かりませんでした。

工務店グループ「アース21」が発足

ハウスメーカー主体に対抗

地域重視の住宅供給へ


 地域に根ざした受注活動と住宅供給ー家づくり本来の在り方を第一に事業や供給エリアなどで提携、そのネットワークでハウスメーカーに対抗する狙いを持った工務店グループ「アース21」が二十日、旗揚げした。住宅業界の協力、組織化は工法普及や販売促進を中心に行われてきた。同グループは十社のスタートだが、住宅供給がハウスメーカー主体できた中で注目される。道内を十九エリアに設定、三十社、住宅供給数が年間一千棟規模まで組織拡大を図り、協同組合化も想定している。
 同グループは、きょうさいサロンで設立総会を開き発足した。設立発起人代表でこの提携を呼び掛け、会長に就任した橋本政仁技建エージェンシー社長(※当時)によると「住文化は地域の産業であるはず。道内各地で仕事をする中で、家づくりは地域に根ざしてあるべき」と考え続け、グループ化は十年来の構想だった。
 加入会員は技建エージェンシー(札幌)、さとう住設工業(同)、石川建設(同)、武部建設(三笠)、佐藤工務店(美唄)、北国ハウス(室蘭)、須藤建設(同)、岡本建設(帯広)、ホクセイハウス(同)、吉田建設社(旭川)の六地区、十社。他に設計、住宅関連、設備などの準会員、賛助会員ら。
 ハウスメーカーが一率的な価値観の住宅を供給する状況に対し、①地域に責任を持った住宅供給を進める②消費者とともに住宅建設に取り組むーなどを打ち出した。具体的事業としては①技術開発部を設置し技術向上を図る②共同購入や共同受注、宅地開発を展開するーなどを掲げた。
 地域第一の住宅供給ーを現実のものとする地区割りは十九。今回の加入会員以外の地区として小樽、倶知安、留萌、苫小牧、日高、函館などを設定した。各地区で年間百棟以内を供給する工務店を加入対象に、今後、賛同企業を募っていく。

続いて、同じく4月23日付の別の新聞記事です。

技術向上へ工務店が団結

道内の中小10社

将来は会社設立も


 札幌、旭川、帯広など道内の工務店十社が、競争力の強化を目的として企業グループを発足させた。中小工務店同士が、互いに情報を持ち寄ることで技術力の向上を図るとともに、営業活動や建材などの仕入れを共同化してスケールメリットを生み出そうという狙いだ。将来は技術開発の分野で共同出資による会社の設立も検討している。典型的な地域密着事業種である中小工務店の広範な連携は道内では初めてという。
 発足したグループの名称は「アース21」。当初は技建エージェンシー(札幌市)、吉田建設社(旭川市)、岡本建設(十勝管内幕別町)、北国ハウス(室蘭市)など年間建築実績二十ー五十棟程度の工務店十社の正会員のほか、準会員、賛助会員として設備工事会社など五社が参加。今後、加盟社を募り、数年以内に百社以上の組織への拡大を目指す。グループ全体の年間建築実績も一年以内に年間五百棟と道内大手並みに拡大。三年以内に千棟を目指す考えだ。
同グループは道内を約二十のブロックに分け、特に気温の低い地域、雪の多い地域、温暖な地域などの特性に適した住宅を共同で開発していく。具体的にはグループ内に「技術開発部」を設置、地域ごとに気密性などの自主基準を設けるほか、技術コンペを行うなど加盟会社の技術情報を収集して最適工法を研究したり、技術学校の解説による技術者育成も目指す。
 共同することによる資材メーカーへの交渉力強化や、顧客の紹介など営業面でも協力していく。同グループの発起人で、会長に就任した技建エージェンシーの橋本政仁社長(※同時)は「加盟各社に地域のリーダーになってもらうことで、道内工務店の技術力の底上げを図りたい。将来は技術の中核となる企業の設立に結びつけていく」としている。

数年以内に加盟工務店を30社、年間棟数1,000棟、協同組合化、共同購入や共同受注、宅地開発、共同出資による技術開発のための企業設立、技術学校まで、非常に革新的であり、野心的とも思える壮大な目標を掲げて設立された団体であることが分かりました。

この25年間、四半世紀の間に住宅業界を取りまく環境も変化し、加盟工務店の入れ替わりはありますが、現在、30社を超える工務店が加盟しています。共同購入もいくつか成功を収めており、共同受注の一つの形として「アース21の本」がこれまでに10冊発行されました。環境の変化に合わせて取り組むべき課題も変わりますが、「地域に根ざす」という設立理念は今も脈々と受け継がれています。

「北海道の家」に誇りをもって

こんにちは。はかせです。

9月の地震の被害でいまだに苦労されている被災者の方たちが少しでも早く元の生活に戻れることを願っています。

この地震では、北広島と厚真のお客さんの家でも何軒か被害がありました。そこで、被害の様子を調査に伺いました。北広島では大曲並木3丁目で宅地の滑落・陥没が起きました。お客さんのお宅は同じ並木3丁目に20年ほど前に建てられましたが、幸い、被害が大きかった大曲川からはだいぶ離れていて、地盤に被害はまったくありません。ただ、外壁タイルと基礎に細いひびが入り、内部も壁クロスにひびが入ってしまいました。また、別のお客さんで北広島駅の方に、こちらも約20年前に建てたお宅で、やはり外壁タイルと基礎にひびが入ってしまいました。


また、上厚真のお客さんを訪ねたときは、いつも渡っている町内の橋がまだ通行止めで、別の道を通りました。途中、山道を走っているときは、道路沿いでも地滑りの跡が残っていて、地震による揺れの大きさが想像されます。一方、市街地へ近くにつれて民家が見えてきますが、倒壊しているような家は見当たりません。

このお客さんの家も築約20年になり、2年前には塗り替えと木部の改修工事はしましたが、離れて見てみても目立った被害はありませんでした。よく見ると確かに基礎に細かいひびが入っているのは分かりましたが、それ以上に、数百キロもある給湯ボイラーが地震の揺れで1mくらい移動してしまったことに、凄まじい揺れだったことを思い知らされます。壁クロスにもひびは入っていましたが、最大の震度7でもこの程度の被害で済んだのですから、丈夫な家を建てることが大切だとしみじみと思います。ともかくお客さんたちが無事でよかったです。


被害にあったお客さんたちですが、幸いにも地震保険をかけていた場合には保険金を受け取ることができました。地震保険は全壊で満額が支給されても建て替え費用には足りず、当座の生活費に充てるという趣旨のものらしいですが、今回のお客さんたちのように耐震性に影響がない軽微な被害であれば、補修工事の費用として利用することもできます。保険料はかかりますので、地震保険をかけるかどうかは悩ましいところですが、保険金が出たお客さんとそうでないお客さんとでは気持ちも全然ちがいましたので、金額的な損得だけでは決められないとも思いました。

地震保険では保険会社から被害調査にやって来ますので、その立会いの際に話を聞いてみると、やはり北海道では全体的に見て、地震による住宅の被害は、新潟や熊本など過去の本州における被害に比べて震度の大きさの割にそれほど大きくなかったそうです。北海道の住宅は雪の重さに耐えられるように本州以南よりも丈夫に建てられているので、ニュースで報道されたように全壊するのは珍しいようです。街中の商店など前面がすべて窓や引戸になっている建物は1階が潰れてしまったりしていますが、一般的な北海道の住宅は寒さに対抗するために窓を小さくしているので、地震の揺れに対しても丈夫な建物になっています。

ただし、今回のような地震が冬の積雪期に起きていたとしたら、被害はもっと大きくなっていたかもしれません。札幌の住宅街には四角い家が多く、ほとんどがスノーダクトのある無落雪屋根です。真冬には重く締まった雪が屋根の上にどっさりと溜まっています。冬場のブラックアウトが心配されていましたが、雪とどう向き合うかも北海道の家における重要な課題です。

家というのはその土地その土地に合わせて長い年月をかけて発展してきました。北海道は「開拓」によって初めは本州以南と同じような家が建てられましたが、積雪・寒冷に耐えるために北アメリカやヨーロッパからの技術を取り入れながら独自に改良されてきました。そして、さまざまな環境の変化に合わせて今も研究・開発が続けられています。まだ発展の歴史は浅いですが、こうしたことこそ、大手ハウスメーカーにはない地域に根ざした工務店の良さだと思います。地元の工務店が建てる「北海道の家」にもっと誇りを持っていいんじゃないかと思いました。